若泉謙太
Post-doctoral fellow, Shirley Ryan AbilityLab, Northwestern University
発表演題: スマートフォン・アプリを使った3か月間の術後遷延痛の瞬間評価〜経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術の前向きコホート研究〜
【背景】痛みの強さはその時の心理状態や活動度に影響されて変動する。痛みの診療では来院時に痛みが評価されることが多いが、その評価は普段の痛みを反映していない可能性がある。近年、スマートフォンの普及に伴い、日常生活における健康状態の評価と記録が簡単に行えるようになってきた。そこで、本研究はスマートフォンのアプリを使ってその時点での痛みの強さを3か月間にわたって記録し、術後遷延痛の評価をした。
【方法】腰椎椎間板ヘルニア(LDH)に対して経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(PELD)が行われた167人と、保存的治療を選択した34人を対象とした。痛みの変動データに指数関数モデルを適合させ、痛みの低減指数と残存する遷延痛を推定した。手術群とコントロール群の背景因子の差は傾向スコアによる逆確率重み付け法により調整した。
【結果】遷延痛が術前の30%以下になる場合を「痛みの改善」と定義したところ、手術群で有意に痛みが改善した患者が多かった(オッズ比=2.35、p<0.001)。手術群では痛みの低減指数も有意に高く(p=0.001)、コックス比例ハザードモデルで有意な早期の改善が示された(ハザード比=1.75、p<0.001)。また、術後早期の痛みの改善は、術前の痛みの強さ(p=0.003)と不安の少なさ(p=0.036)に関連があった(F(7,120)=2.51、p=0.019)。
【結論】スマートフォンを使った痛みの瞬間評価は術後遷延痛の評価に有用であり、PELDはLDHの痛みを早期に改善させる。
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