渡瀬成治 Postdoctoral Research Fellow at University of Michigan
発表演題: 幹細胞が非対称に分裂する際に見られる非ランダムな姉妹染色分体の分配
細胞周期において、細胞は自己の遺伝情報であるDNAを正確に複製し、均等に二つの娘細胞に受け継ぐ。DNA複製は非常に厳密なプロセスであるため、複製の結果作られる染色体のペア、姉妹染色分体は全く同じ情報を持つと考えられる。その一方で、幹細胞の研究分野では、何らかの形で区別された姉妹染色分体が、非ランダムに幹細胞と分化細胞に受け継がれる可能性がこれまで長い間議論がなされてきた。しかし、その詳細は明らかになっていない。私たちは以前、雄ショウジョウバエの生殖幹細胞が非対称に分裂する際に、XY染色体の姉妹染色分体のみ非ランダムに幹細胞と分化細胞に受け継がれることを報告した。私は最近、XY染色体の姉妹染色分体の非ランダムな分配が、リボソームDNA (rDNA) とrDNAに特異的に結合するタンパク質CG2199 (インドラと命名) によってコントロールされていることを発見した。rDNAは約200コピーからなる反復配列であり、老化とともにコピー数が減少する。その一方で、生殖細胞ではコピー数の回復が起きることでrDNAコピー数が安定に保たれていると考えられている。インドラを欠損した生殖細胞ではrDNAコピー数の減少が起きることから、生殖幹細胞における姉妹染色分体の非ランダムな分配がrDNAコピー数の回復に必要であり、それによって生殖細胞の不死化が獲得されている可能性について紹介する。
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