夏秋洋平
Senior Research Fellow, Skin Research Institute of Singapore
発表演題: ”かぶれ”の可視化への挑戦
かぶれ(疾患名:接触皮膚炎)は皮膚科疾患の中でもっとも身近なアレルギー疾患の一つである。かぶれは大きく分けて「感作相」と「惹起相」という二つの異なる免疫反応から成り立っている。感作相とは、皮膚から浸入した外来異物(抗原)を認識して、その抗原に速やかに対応するための特殊部隊(抗原特異的リンパ球)を教育する過程である。一方、惹起相とは、同一抗原が再侵入した際に、事前に侵入に備えていた抗原特異的リンパ球が速やかにこれに対応し、抗原を排除するために炎症という免疫反応を起こし、その結果、二日以内に皮膚に発疹が生じる過程である。これらの一連の過程は、これまでの研究成果により、分子および細胞レベルでの説明が可能になってきている。しかしながら、そこには一つのジレンマがある。それは何か。これまでの研究報告において、かぶれ発症の一部始終を観察した研究者は、皆無である。実は、上述の免疫反応は、過去の多くの研究報告から揺るぎないものではあるが、かぶれ発症を断片的に観察、解析した故に得られた結果である。従って、それらは、感作から惹起というかぶれ発症における一連の免疫反応を完全に証明したとはいえない。今回私たちは、生体内で起こる細胞の挙動をリアルタイムで観察することを可能にするライブイメージング法という最新の研究手法を用い、世界に先駆けてかぶれ発症の過程を可視化することに成功したので報告する。
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