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石井健「コロナ禍で起きたワクチン開発研究の破壊的イノベーション」

更新日:2021年6月29日

名前:石井健

所属:東京大学・医科学研究所・ワクチン科学分野 /

医薬基盤健康栄養研究所・モックアップワクチンプロジェクト

トピック:コロナ禍で起きたワクチン開発研究の破壊的イノベーション


コロナ禍において起きたワクチン開発研究の破壊的イノベーションは、コロナ禍以前、「ワクチンといえば専ら予防接種、感染症分野のことでしょう」、(ワクチンは)先端科学、技術ではないでしょう」、という認識だった医学界、科学界、世間の意識を完全に過去に葬り去った。ワクチンは既に医薬品開発において温故知新の革新的モダリティーとして再認識され、mRNAやDNAだけではなく、ウイルスベクター、組み換えタンパク、VLP,ペプチド、アジュバントなどの創薬が激しい勢いで進化しており、将来はがんやアレルギー、各種免疫「関連」疾患に対する先制医療の一翼を担うと考えられている。

この破壊的イノベーションは過去20年にわたる基礎研究の地殻変動、すなわちワクチン抗原の分子生物学、微生物学、構造生物学、そして自然免疫、粘膜免疫、腸内細菌などの基礎研究成果や、脂質ナノ粒子などのDDS研究、抗体医薬などのタンパク工学、さらには感染、ワクチン接種後に機械学習から深層学習、AIを用いたバイアスのない網羅的解析があったから起きたといえる。この成果はすでにパンデミック以前に感染症のみならず、生活習慣病やがん、アレルギーなどの発症メカニズムの解明や、ワクチン、免疫療法などの臨床応用研究へ広がりを見せていたのである。

基礎免疫研究分野でも新たな潮流の変化が見られている。病原体の認識機構の研究で勃興した自然免疫の領域では、宿主細胞自体のストレス、ダメージ、細胞死によって放出される宿主成分が、病原体に対する免疫反応やワクチンのアジュバントの作用機序の一端を担っていることが明らかになりつつある。

本セミナーではSARS-CoV2に対するmRNAワクチン、免疫核酸医薬による免疫療法、細胞外核酸による免疫制御機構など、我々の研究室の新たな知見を発表したい。







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